Q 亡くなった父の預金の名義を生前、贈与税の申告をせずに孫に変えていたのですが、相続税の申告にあたりその預金を相続財産に含めなければならないと聞きましたが、本当ですか。

A
 贈与は契約です。贈与が成立する契約の条件は、①贈与をする人(贈与者)が贈与を受ける人(受贈者)へ対象財産を贈与する意思を伝え、②受贈者がその贈与を受諾する意思を贈与者へ伝えることです。加えて、③贈与者は対象財産を受贈者へ引き渡し、④受贈者はその対象財産を自分で管理しなければなりません。
①と②は文書を取り交わさず口頭でも成立します。④の管理とは、受贈者自身が贈与された財産を管理し、処分するときは受贈者の自由意思で即座に行なえる状態を言います。
質問では、亡父の預金の名義を生前孫に変えていたとありますが、亡父が孫に預金を贈与すると伝えていたのでしょうか。名義変更後の預金を孫が管理していたのでしょうか。
贈与の契約が成立していなければ、孫の名前を借りた亡父の預金となり、相続税の申告の際に相続財産へ含めるべきであると考えられます。
金銭や預金を贈与するときは、❶贈与契約書を交わし、❷受贈者所有の銀行印が登録され、かつ受贈者が管理している預金へ振り込むことをお勧めします。

2021(R3)/8 中日新聞掲載 執筆:神谷研

神谷研税理士事務所